「CRM導入成功」って、何をもって成功と言うのか?
「CRMを導入しました!」と意気込んでみたものの、数ヶ月後に「結局、何が変わったの?」という声が社内から聞こえてくる——。
こんな経験、ありませんか?
営業資料の作成が楽になったり、顧客情報が一元化されたりと、システム導入による効果は確かにあるはず。でも、それだけで「CRM導入成功」と言い切れるのでしょうか?
実は、本当にCRMを活用できている会社と、そうでない会社の違いは「マネジメントの変革が起きているかどうか」にあります。
つまり、CRM導入とは単なるツールの導入ではなく、組織の動き方そのものを変える取り組みなのです。
CRM導入の落とし穴、「営業の行動」はどう変わる?
CRMの目的は、「顧客との関係を深めること」。
そして、それを実現するには、顧客と直接やり取りする営業現場の行動が変わらなければなりません。
では、その行動をどうやって変えるのか?
よくあるのが、こんな方法です。
- インセンティブを増やしてモチベーションアップ!
- ロールプレイングを繰り返して体に叩き込む!
- 厳しい営業研修で根性を鍛え直す!
- トップ営業のやり方を見て学べ!
……うん、どれも聞いたことがありますよね。
でも、これらは一時的な効果しかなく、持続的な行動改革にはつながらないことが多いのです。
なぜなら、根本的な問題は「個々の営業マンの努力」ではなく、会社の仕組みやマネジメントのあり方にあるからです。
営業のやり方が属人的な会社は、マネージャーが変わると崩壊する
たとえば、日本が誇る製造業の現場を想像してみてください。
トヨタのような工場では、現場の仕組みがきっちり整備されているため、工場長が変わっても生産のクオリティが極端に変わることはありません。
でも、営業の現場はどうでしょう?
マネージャーが変わると、管理のやり方がガラッと変わってしまうことは珍しくありません。
「前の部長はこんなやり方だったのに…」と戸惑った経験がある人も多いはずです。
つまり、営業マネジメントは「属人的」になりがちで、仕組みとしての一貫性がないのです。
これでは、せっかくCRMを導入しても、
「Aさんがマネージャーのときはうまくいってたのに、Bさんに変わったらグダグダに…」
ということが簡単に起きてしまいます。
だからこそ、CRMを成功させるには、「営業のやり方」ではなく「マネジメントの仕組み」を変える必要があるのです。
マネジメント改革が進まない会社の4つの特徴
とはいえ、「マネジメントを変えよう!」と言っても、そう簡単にはいきませんよね。
むしろ、多くの企業がこんな理由で改革に苦戦しています。
- 目的が曖昧
売上をもっと伸ばしたい」「組織力を強化したい」。もちろん、それは大事な目標ですが、肝心なのは「そのために、具体的に何を変えるのか?」という部分です。
CRMを導入したとして、「これで売上アップだ!」と期待しても、それだけでは何も変わりません。システムはあくまでツール。現場の動きをどう変えるのかを明確にしなければ、成果にはつながらないのです。
- 理想論ばかりで、現場のリアルと合わない
「あるべき論」は、誰にでも語れます。
「理想のマネジメントとは」「本来あるべき姿は」——そうした話を聞くと、「まあ、そりゃそうだけど…」と思いながらも、実際に何をすればいいのかが見えてこない。
改革を進めるには、現場のリアルな課題と向き合い、「この会社の、このチームでは、どうすれば動くのか?」を考えることが不可欠です。
- 現場が「今のままでいい」と思っている
人は変化を嫌うものです。
特に、日々忙しく働いていると、「新しいやり方を取り入れよう」と言われても、「そんな余裕はない」と思ってしまう。
「このままでも、なんとか回ってるし」「変えなくても仕事はできるし」——そんな雰囲気が、改革の足を引っ張ってしまうのです。
- マネジメントが評価されない
会社の評価基準が「売上・利益」だけだと、マネジメント改革に力を入れたところで、「結局、結果が出てないと意味ないよね」となりがちです。
どんなに良い仕組みを作っても、それを評価し、継続できる仕組みがなければ、途中で頓挫してしまうでしょう。
この4つの課題を放置していると、CRM導入は「単なるシステム導入」で終わってしまい、肝心の行動改革が起こらないのです。
「CRM導入成功」への道:マネジメントを変える4つのポイント
では、どうすればCRMを本当の意味で活用できるのか?
マネジメント改革を成功させるためのポイントは、以下の4つです。
1. 目的を「行動レベル」で明確にする
「もっと売上を伸ばしたい」「もっと組織力を強化したい」といった抽象的な目標ではなく、具体的な行動レベルまで落とし込むことが大切です。
たとえば、「CRMを導入して売上アップを狙う」のであれば、
- 営業担当が毎日データを入力する
- マネージャーが週1回、データを分析してフィードバックする
- 1か月後に商談成約率の変化を確認する
といったように、「誰が・いつ・何をするのか?」を明確に決める必要があります。
2. マネージャー自身が「モデル」を作る
経営層から「こうしろ」と言われるだけでは、なかなか浸透しません。
「自分たちはどうしたいのか?」を現場のマネージャー自身が考え、モデルケースを作ることが大切です。
すでに成果を出しているマネージャーのやり方を参考にするのも有効な手段でしょう。
3. 「忙しくてもできる仕組み」を作る
「変えたくても、忙しくて手が回らない」——これは、多くの現場が抱える悩みです。
だからこそ、作業負荷を軽減する仕組みが必要です。
たとえば、CRMの自動入力機能を活用する、マネジメント業務をシンプルにする、といった工夫をすれば、改革が現場に負担をかけずに進められます。
4. 「マネジメントの取り組み」自体を評価する
売上・利益だけでなく、「どんな工夫をしたのか?」「どんな変化が生まれたのか?」を評価する仕組みがあれば、マネジメント改革への意欲が高まります。
- チームの成長や業務の効率化が進んだか
- 社内のコミュニケーションが活性化したか
- 改善のアイデアを出した人を評価できているか
こうしたポイントを評価対象にすれば、改革が継続しやすくなるでしょう。
CRMは「マネジメント改革」のためのツール
結局のところ、CRM導入の成功とは、「マネジメントの仕組みが変わり、営業現場の行動が継続的に変わること」です。
CRMそのものが成功を生むのではなく、CRMを活用するためのマネジメントの仕組みを作ることが大切。
システム導入で終わりではなく、「CRMをどう使ってマネジメントを変えるか?」まで考えることが、成功のカギを握っています。