さて、CRM/SFAにおける企画のまとめ方、4回目です。
企画における問題分析(前回のおさらい)
前回の記事では、企画における問題分析に関して書きました。繰り返しになりますが、問題分析は客観的である必要があります。しかし実際にはプロジェクトにはおいては、どうしても社内の権力構造や、「声の大きさ」という影響を受けてしまいます。
社内で「声の大きい」人の意見が、必ずしも会社として「重要なこと」とは限らず、当然ですが「声の大きさ」で取組む課題の優先順位を付けてはいけません。
必要なのは、あくまでも会社体としての視点であり、逆に「企画を作る人自身の考え」を優先しても当然ダメです。しかし、とは言いながらも会社員としての立場となると「企画を通す」ことも重要なミッションになります。声の大きい人を無視して企画自体が通らないと、この企画の仕事の価値はゼロになってしまいます。
これはCRM/SFAといったシステム導入だけの話ではなく、企画という仕事において「客観的、合理的な企画」が必ずしも「通る」とは限らない点がこの仕事の苦しい所です。
ロジックは崩さずに、企画を「通す」ということ
なかには企画を通す上で、中身の話ではなく、部長と常務と専務で別々に「企画書のフォーマット(体裁)」を求められたりもします。たとえば、部長はディテールに拘った分厚い資料を好み、常務は数ページの簡易でストレートな表現の資料を好み、専務は中身はどうでもよく費用対効果の説明と根拠だけで良い……といった具合です。部長と常務と専務で話しあって、合わせてくれれば良いのですが、そういう会社の方が少ないのが実態かもしれません。
では、このような場合の良い解決策はあるのでしょうか? 正直に言えば「無い」と思います。昔は高額なコンサルファームに企画を依頼するのは、この様な不毛さを回避する為とも言われていました。
「凄い略歴、世界的なファーム」というブランド力と、ちょっとした「上から目線」と「君たちコレ知らないでしょ攻撃」で企画をまとめてしまえば、うるさ方の役員層も文句をいえない、という状況にしてしまうのです。
(議論の際、突っ込みをかわして、ねじ伏せる点ではプロです。何度かそういう場を見ましたが、見事なほどに「納得」させられてしまいます)
話を元に戻しますと、企画を「通す」ために合理性、客観性を捨てる必要はありません。重要なのは、正しい方向に一歩でも進めることですから、基本的なロジックは崩さずに「通す」労力もそれなりに割く、という技術が必要となります。
「外」の視点、「内」の視点
余談が多くなりましたが、CRM/SFAの企画において、まだ書いていない重要なポイントがあります。
それは、外部(市場-顧客)と内部(社内)のバランスです。CRM系の企画書には、どちらかしか書いていないケースが多く見られます。
昔のCRMはマーケティングコンセプトと結びついており、外部のことばかり書いてある企画書が多く見られました。たとえばOneToOneマーケティングという言葉が流行りましたが、それが典型です。確かに「顧客の個に対して個別にマーケティングを展開する」というのは魅力的です。
しかし、それを実現するオペレーションが伴わなければ、成功するはずもありません。すなわち「内の視点」です。高度なITシステムと、社内の組織や制度とを対応させるにあたり、組織や制度について何の権限も持たないのに「上手くやれ」と落とされた企画担当者は、内部の事情には触れずに外部のことばかりを書く、という結果になりがちです。
流行のITシステムを売りたい人たちと、それに飛びついた経営者という構図の中では、結局そういう企画書になってしまいます。
顧客視点でSFAを考える
逆に、SFAの企画には、内部を向いたものが非常に多く見られます。
たとえば「訪問件数をもっと増やせ」「決裁者にもっと会え」「提案書を共有せよ」「営業プロセスを管理せよ」……といった内容のものです。しかし顧客側からすれば、社内的なノルマを達成する目的だけで、大した提案もないのにそう頻繁に訪問されても迷惑でしかありません。
営業という行為も、あくまでマーケティング活動の一貫ですから、たとえば「自社が非常に競争力が高い商品・サービスを有している」のか、あるいは「特に目立つ商品はないが、複数商品として組み合わせを提案する問題解決型」なのか、などによっても本来は動き方が変わるはずです。
そのあたりを合理的に見極めて「営業力強化の企画」を行わないと、科学的な営業への移行といいながら「訪問件数を増やせ」「提案の質を上げろ」「受注までの期間を短くせよ」「単価を上げろ」「訪問先を変えろ」などの指示を出すばかりとなり、方法についても「SFAに入力して、あとは根性で」のような、具体性に乏しいものになってしまいます。
企画で扱うべき内容とは?
前回の記事でも「うちの営業は新規開拓ができない」「属人的な営業スタイルで、組織で戦えていない」等々、問題点として「内」の話ばかりが出ていましたが、市場や顧客との関係性を抜きに「営業のやり方を変える」というのは的外れです。すなわち「外」の視点をしっかり入れる、ということです。
企画における重要な二点は「現状の問題分析」と「外の視点、内の視点」ですので、
- 「市場/顧客からみた現状の問題」
- 「経営上からみた問題」
とすると、解りやすくなる筈です。さてもう一つここで何かを付け加えたくありませんか?
- 「市場/顧客からみた現状の問題」= Customer
- 「経営上からみた問題」= Company
3Cなど意識している人だと「競合」= Competitor を加えたくなりますね。実際に営業の現場で「競合」を意識しないことはないでしょう。
たとえば、本来ニーズがある顧客に対してアプローチしきれていない(◯◯業であれば自社製品はニーズがあるが、自社製品を導入しているのは◯◯業500社のうち20社のみ)などです。もちろん、この問題を考えたときには「競合」の要素も絶対に外せません。
その原因を考えれば「そもそも認知されていない」「訪問のタイミングが悪い(顧客視点からみて)」「顧客に自社製品の強みを伝えられていない」……など、色々と出てくるでしょう。
また、「市場/顧客」「競合」などの視点で問題を分析したときに、気を付けたいのは「価格が高い」「性能、品質が……」という営業以外の問題点が多く出てくることです。
この点は本当にそれが真実であるかどうかも非常に難しい問題ですが、もともと今回の連載記事のテーマは「営業力強化の為のCRM/SFA導入」ですから、営業以外に原因がある問題に関しては、そもそも扱わないと決めてしまうことが賢明です(企画をまとめる人は、高いファシリティーション能力が必要になります)。企画をまとめるにあたっては、あくまでも営業で解決できる問題に集中すべきです。
まとめ
クラウドサービスであっても、VPN回線を通さなければ繋げないようにしている企業も多いですが、何でもVPN回線越しのアクセスになると帯域が不足しますので注意が必要です。
会社によって事情が異なるため詳しい方に聞いていただききたいところではありますが、Proxyサーバを導入していてもスクリプトによる自動構成などもできますので、VPNの接続や切断をせずに運用していくことは可能です。
また、セキュリティ面を意識すると情報管理はどうしても細かくし過ぎてしまう傾向があります。
この場合思わぬ事故に繋がりかねないため、ポイントを押さえつつ、可能な限りシンプルにすることをお勧めします。