さて、そろそろ「企画フェーズ」を抜けたい気もしますが……まだ続きます。

ちなみに、今回のお題は「営業力強化の為のCRM/SFA導入」でしたね。
前回までの内容を簡単に要約すると以下二点になります。

1.現状を良く分析する事
2.問題点を3Cの視点からまとめる事

しかし、これまでの内容は、ITシステムとしての「CRM/SFAシステム」とは直接的には関係のない事ばかりです。

現状の分析を行った結果として、CRM/SFAシステムを導入・活用し、どのように解決していくか? をまとめていかなければ「企画」にはなりません。

これもけっこう難しい作業になります。ITシステムの導入によって「営業が現状で抱えている問題点」をすべて解決できる訳ではないからです。

営業生産性向上フレーム

色々と解説しているとまた長くなってしまいますので、こちらの資料をご覧ください。営業の生産性向上をフレーム化してみたものです。この資料はもともと営業力強化ではなく、生産性向上(労働時間短縮)を目的として筆者が作ったものですが、フレームとしては使えます。

A-1 営業直接業務

営業本来の活動、すなわち、お客様と面談して自社の製品やサービスをアピールし、発注を頂く業種です。営業職がこの業務に実際に割いている時間は、3割程度と言われています。

A-2 支援系業務

A-1を支援するための業務、要は提案書や見積を作ったりといった業務で、お客様とのコミュニケーションに直接作用します。

すなわちA-1を行うために必要とされるオフィスワークです。たとえば提案書がとても素晴らしい内容であれば、A-1にインパクトを与えられます。また作業効率を高めて作成する時間を削減することも、営業生産性向上には貢献します。ちなみに製造業においては、お客様から頂いた要望を、設計・製造に伝えてコミュニケーションする役割も担っており、この時間が非常に多いです。

B-1 マネジメント付随業務

A-1、Aー2と直接の関係はなく、営業をマネジメントするために必要な業務です。手持ちの案件をExcelの管理表に記入したり、顧客情報を報告したり、営業日報を作成するなどの業務を指します。

直接的にはA-1にインパクトを与えませんが、営業職の活動から無駄を排除したり、営業活動をもっと効果的に行うための指示を出したりするために行います。業務調査などを行うと、これらに使われている時間はとても多く、同じような報告を多重に求められて苦しんでいる、という現場も多いです。

これらが機能していない(A-1に対して効果的に作用していない)のであれば、止めてしまった方が効率的といえます(機能させるためには、マネジメント力を強化していく必要があります)。また、機能していたとしても、できるだけ省力化したほうが良い業務だという事は、ご理解いただけると思います。

B-2 教育・トレーニング

営業職のスキルを高めるため、外部講師を招いてヒアリングやプレゼン能力の向上を目指したり、社内でのロールプレイングなどを行います。

実施している会社ではかなりの時間とコストを費やしていますが、その割には効果の検証が難しく、なんとなく伝統的に「うちの営業部はそういうものだから」と継続している会社も多く見受けられます。

但し、現実問題として、営業成績の大部分は個々人のスキルに依存しているのも確かです。

B-3 管理業務その他

事務処理・交通費申請・勤怠管理など、営業業務と直接の関係はないものの、会社の運営・ガバナンス・労務管理などに必要な業務です。

組織の規模が大きくなるにつれて、この領域の業務も肥大していき、本来の営業業務を圧迫しているケースが多く見られます。

業務を分析し、営業力を強化する

営業職の業務を分類すると、業種・業態を問わず、おおよそ上記フレームの通りに分類できると思われます。業務に対して、良い方向にインパクトを与えるため実施するのが取り組み(インプット)、それにより得られた結果(アウトプット)となっています。前置きした通り、この資料はもともと労働時間の短縮に焦点を当てていますので、アウトプットは削減や短縮です。

営業力の強化を主題としたときには、営業成績に直接の影響がある A-1 の時間をいかにして増やし、かつ質の高い活動にシフトさせて、B系統の業務をいかに削減するか? ……が大きな要素となります。

逆に、リソース(時間)の問題を抜きにして営業力の強化を考えるのであれば、個の対応力を高めるスキル向上に取組むか、組織力を向上させて「営業マネジメント」を強化(仕組み作りを含む)くらいしかできる事はありません。

それに加えて A-2 の強化(たとえば営業が下手な説明をしなくても、動画を見せれば欲しくなってしまう仕掛けなど)も考えられますが、本質的には、

  • 訪問の量を増やす
  • 営業対応(提案、ヒアリング力)の質を上げる
  • 会う人を変える、タイミングを変える

くらいしかありませんので、この場合は各人のスキルを高めて、これらの判断力を身につけてもらうか、組織で対応して行くかのどちらかになります。

フレームを使ってCRM導入/活用を考えると…

さて、「CRM/SFAシステムを導入・活用して、どのように解決していくか?」に戻りますが、このフレームを使うならば、ITシステムでインパクトを与えられるのは「仕組化・情報共有・システム化」となっている部分になり A-2 / B-1 / B-3 が該当しています。さらにB-3はシステムの領域でいえばワークフローなどの領域となり、「CRM/SFA」の領域とは外れます。

今回のお題は「営業力強化の為のCRM/SFA導入」ですから、問題分析にて表出化した現状の問題点のなかから、A-2、B-1の領域にインパクトを与える事で解決できるものは何か? また、どのようなインパクトを与えるか(手段)? が企画書に書かなければいけない内容という事が導き出せます。

(但し今回のフレームを使った整理はあくまで一例でのでご参考までに。)

このように、企業規模の拡大や、高度な分析、社内での情報共有・編集が目的の場合、いつかはエクセル(Excel)管理の限界は訪れます。

次回のお話は

営業系を対象とした業務改革、システム導入は、非常に混乱しがちです。

営業スキルの話・マネジメントの話・事務処理の話・他部門との連携問題……などが整理されず、問題の相関や粒度を整理しないままに取組んでしまい、結局はなんとなく「システムを入れれば効果が出るだろう」となり、いつのまにか「システムの導入自体が目的」となってしまう事が原因です。

おそろしい事に、CRMベンダーやSIerには、この領域をしっかりコンサルできる人はいません(理由はこの連載の第1回に書いています)。

さらには営業系のコンサルタントには「トンデモ系」がいることも少なくありません。たとえば「訪問件数を現状の3倍コミットさせ、絶対にやらせる」、もしくは「業務調査などムダ、定時になったら消灯してPCも強制シャットダウンすればよい、理由はナントカ心理が働くから」など、論評する気も起こらないような、無茶苦茶なものを見かけることもあります……。

さて、次回は、営業マネジメントや仕組み化を行い、どの様にインパクトを与えるかを、サンプルとして書きたいと思います。

混乱してしまったら、分解してみる。分解したら整理する。営業領域だろうとなんだろうとそれは一緒だ。物事が整理できればおのずと方向性がはっきりとして、前に進む事ができる

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