• 「価格競争が激しく、利益率が上がらない」
  • 「納品後、顧客との接点がなくなってしまう」
  • 「保守・アフターサービスを収益化できていない」

こうした課題への対応策として注目されているのが「サービタイゼーション」です。

この記事では、サービタイゼーションが注目される背景から、メリットや課題などを
わかりやすく解説します。

自社でサービタイゼーション取り組む際のポイントを整理したい方は、ぜひ参考にしてください。

サービタイゼーションとは

サービタイゼーションとは、保守・運用支援・データ活用サービスなどを通じて、納品後も顧客を支援しながら継続収益の創出を目指すビジネスモデルです。主に製造業で注目されています。

従来の製品販売との最大の違いは、製品の納品をゴールとしない点です。
製品販売が納品時に売上を確定させるのに対し、サービタイゼーションでは納品後も保守・運用支援・改善提案などを通じて顧客との関係を維持しながら収益を生み出します。

つまり、製品を納品して終わりではなく、顧客が継続的に成果を出せるように伴走することを価値の中心に置く考え方です。

サービタイゼーションの考え方を示した概念図。納品後も価値提供と改善を繰り返し、顧客価値向上・LTV向上・継続収益につなげるビジネスモデルを表している。

サービタイゼーションと聞くと大規模な事業変革をイメージしがちですが、実際には多くの企業が既存事業をベースに、保守契約や運用支援など取り組みやすい領域から段階的にサービス領域を拡大します。

では、工場の製造設備を開発・販売しているメーカーを例に考えてみましょう。

サービタイゼーションによる提供価値の広がりを示した概念図。製品販売を起点に、保守契約・稼働監視・改善提案などの代表的なサービスを組み合わせることで、顧客への提供価値や関係性が深まり、顧客価値向上・継続収益・LTV向上につながることを示している。

サービタイゼーションは、以下のような段階を経て発展していくケースが一般的です。

  1. 製品販売(従来型)
    製造設備を顧客に販売し、納品時に売上を確定させる
  2. 保守契約
    納品後、定期点検や故障時の修理対応を月額固定の契約として請け負う
  3. 稼働監視
    設備にセンサーなどを取り付け、エラーの予兆や稼働状況を遠隔でリアルタイムにモニタリングする
  4. 改善提案
    蓄積された稼働データをもとに「どうすれば工場の生産性がさらに向上するか」というコンサルティングや運用改善の提案を行う

このように、サービタイゼーションは全く新しい事業を立ち上げる取り組みではありません。

既存の製品販売をスタート地点として、顧客との接点を増やしながら提供価値を広げていくアプローチです。

また、サブスクリプションとサービタイゼーションは混同されがちですが、両者は役割が異なります。
サブスクリプションが定額制などの料金体系を指すのに対し、サービタイゼーションは顧客への継続的な価値を提供するための事業モデルです。

例えば、設備の保守サービスを月額料金で提供する場合、月額課金という仕組みがサブスクリプションであり、納品後も保守や運用支援を通じて顧客を支援し続ける考え方がサービタイゼーションにあたります。

なぜ製造業でサービタイゼーションが注目されているのか

製造業でサービタイゼーションへの関心が高まっているのは、製品を販売するだけでは継続的な成長や収益確保が難しくなっているためです。

市場の成熟が進み、製品の機能やスペックによる差別化は長続きしにくくなっています。
価格競争に陥りやすくなり、利益確保が難しくなるケースも少なくありません(製品のコモディティ化)。

また、製品の耐久性が向上したことで買い替えサイクルが長期化し、新規販売(フロー収益)だけに頼るビジネスは業績の波が大きくなるリスクも抱えています。

市場環境の変化に加え、人口減少の影響もあり、新規顧客の獲得は年々難しくなっています。
そのため、一度獲得した顧客との関係を維持しながらLTV(顧客生涯価値)を高めていく重要性が増しており、納品後も継続的に接点を持てるビジネスモデルへの関心が高まっています。

この流れを後押ししているのが、IoTやデータ活用、通信環境の発展です。

顧客が製品をどのように利用しているのかをメーカー側が把握しやすくなり、製品利用データを収集・分析できるようになりました。その結果、顧客課題の可視化やトラブルの未然防止、新たなサービスの提供につなげやすくなります。

サービタイゼーションによって得られるメリット

製造業がサービタイゼーションに取り組むことで、主に次の3つのメリットが期待できます。

  • 継続収益による売上の安定化
  • LTV(顧客生涯価値)の向上
  • 価格競争からの脱却

継続収益による売上の安定化

サービタイゼーションの大きな特徴は、製品販売による単発収益だけでなく、保守契約や運用支援などによる継続収益(ストック収益)を積み上げられる点にあります。

売上予測を立てやすく、景気や買い替えサイクルの影響を受けにくい収益基盤を構築できるため、経営の安定化や収益構造の改善に寄与します。

LTV(顧客生涯価値)の向上

納品後も継続的に関係を築くことで、LTV(顧客生涯価値)の向上に期待できます。サービス提供を通じて利用状況や課題を把握しやすくなり、長期的な取引の継続やアップセル・クロスセルなど新たな提案の機会が生まれます。

既存顧客との関係を深めながら、顧客一社あたりの売上拡大を目指せます。

価格競争からの脱却

サービタイゼーションは、競合との差別化を図るうえでも有効です。

製品そのものだけでなく、保守品質や運用支援、継続的なサポートといったサービス全体で価値を提供できます。価格以外の価値でも評価されるようになるため、価格競争を避けられるようになり、利益率の維持・向上にもつながります。

また、サービタイゼーションは経営面だけでなく、現場の業務にもさまざまなメリットがあります。

  • 営業部門
    従来の「そろそろ買い替え時期ですか?」という御用聞きスタイルの営業から脱却できます。
    保守履歴や利用状況を踏まえ、顧客の課題に応じた改善提案や更新提案を行えるため、より付加価値の高い提案営業を実現できます。
  • 保守部門
    突発的な故障への対応に追われるだけでなく、保守履歴や整備の稼働状況、点検結果などをもとに点検や部品交換を計画的に実施できるようになります。緊急対応の負担を軽減し、保守業務の効率化にも役立ちます。
  • カスタマーサポート部門
    顧客からの問い合わせ後に状況を調べる受動的な対応だけでなく、問い合わせ履歴や利用状況を踏まえたスムーズな対応が可能になります。緊急対応の負担を軽減し、保守業務の効率化にも役立ちます。

さまざまなメリットがあるサービタイゼーションですが、成功させるために、事前に確認しておきたい課題もあります。

サービタイゼーションの推進でよくある課題

サービタイゼーションには多くのメリットがある一方で、推進にあたって乗り越えるべき課題もあります。代表的な課題として、主に以下の4つが挙げられます。

課題1:サービス設計の難しさ

製品だけでは差別化しにくい中、顧客に選ばれるサービスを設計することは容易ではありません。

例えば、標準(無償)対応と有償サービスの範囲をどのように線引きするかは、サービス設計において多くの企業が直面する課題の一つです。

課題2:組織・評価制度の転換

「売り切り方営業」から、長期的に顧客を支援する「伴走型営業」へのマインド転換が求められます。

また、販売契約件数のみを評価指標とする従来の精度では、継続的なサービス提供への貢献を正しく評価しにくいため、評価制度の見直しも欠かせません。

課題3:収益モデル設計

従来の原価に利益を上乗せする値付けではなく、月額固定や従量課金、成果報酬といった新たな収益モデルへの対応が必要です。

あわせて、安定して利益を確保できる原価構造の設計も求められます。

課題4:顧客情報管理と運用体制の整備

サービスを提供し続けるためには、顧客の利用状況や過去のトラブル履歴を一元的に把握できる体制が欠かせません。

しかし、製造業の現場では、担当者ごとのExcelに情報が散在する「情報のブラックボックス化」や、営業と保守の間で情報が共有されない「部門間の情報分断」といった課題が発生しがちです。

これらの課題を踏まえ、自社に適したサービスを設計するためには、どのようなサービス形態があるのかを理解することも重要です。

製造業におけるサービタイゼーションの代表モデル

サービタイゼーションを推進する際、自社製品の特性や顧客ニーズに合ったサービス形態を選ぶことが重要です。

製造業ではさまざまなサービスモデルが採用されていますが、その中でも代表的なものとして「保守契約型」「稼働監視型」「成果報酬型」「サブスク型」が挙げられます。

それぞれ提供する価値や収益モデルが異なるため、自社の事業や顧客ニーズに適したモデルを選択することが重要です。

製造業におけるサービタイゼーションの代表モデルを比較した図。保守契約型、稼働監視型、成果報酬型、サブスク型について、それぞれのサービス内容、収益ポイント、顧客メリットを整理している。

保守契約型

定期点検や故障時の修理対応などを継続的に提供するモデルです。

工作機械や産業機械など定期的なメンテナンスが欠かせない製品では、年間保守契約の一環として定期点検や消耗部品の交換、故障時のオンサイト対応を提供するケースが多く見られます。

納品後も継続的に顧客を支援できるため、長期的な関係構築につながります。

稼働監視型

IoTセンサーなどを活用して設備の稼働状況を遠隔監視し、異常検知や予防保全を行うモデルです。

コンプレッサーや生産設備など、設備データを取得できる製品では、24時間体制で稼働状況を監視し、異常の兆候を検知すると保守担当者へ通知する仕組みが活用されています。

設備停止のリスクを抑えながら、計画的に保守や安定操業を支援します。

成果報酬型

顧客が得られた成果に応じて料金を受け取るモデルです。

生産性向上や省エネ効果を数値で評価しやすい改善支援では、生産設備の運用改善を行い、生産性向上率やエネルギー削減量など、あらかじめ設定した成果指標の達成度に応じて報酬を設定するケースが見られます。

顧客と提供企業が共通の成果目標を持ちながら取り組める点が特徴です。

サブスク型

製品を販売するのではなく、月額・年額などの定額料金で利用してもらうモデルです。

産業用プリンターや測定機器など、初期投資が導入の負担になりやすい製品では、機器本体に保守サービスやソフトウェアアップデートを組み合わせて月額料金で提供するケースがあります。

顧客は初期費用を抑えて導入しやすく、提供企業は継続的な収益を確保しやすくなります。

どのモデルが適しているかは、製品特性だけでなく、顧客が求める価値や自社が提供できるサービス内容によって異なります。

例えば、定期点検や部品交換が欠かせない製品であれば保守契約型、設備の稼働データを取得できる製品であれば稼働監視型との親和性が高いでしょう。

また、初期逃避を抑えたい顧客にはサブスク型、生産性向上や省エネなど具体的な成果を重視する顧客には成果報酬型が適しています。

実際には、一つのモデルだけを採用するのではなく、複数のモデルを組み合わせて提供する企業も少なくありません。例えば、保守契約から始めた顧客に対して稼働監視型サービスを追加し、さらに蓄積した設備データを活用して改善提案や成果報酬型の契約へ発展させるケースもあります。

顧客との接点や提供価値を段階的に広げていくことが、サービタイゼーションを成功させるポイントです!

無理に高度なモデルから導入する必要はありません。

まずは自社の製品やサービスとの親和性が高いモデルから始め、顧客との関係を深めながら、提供できるサービスを段階的に拡充してくことが現実的です。

サービタイゼーションを進める5つのステップ

サービタイゼーションは、単にサービスメニューを追加すれば実現できるものではありません。
顧客課題の把握から収益モデルの設計、運用体制の整備までを段階的に進めることが重要です。

具体的には以下の5つのステップで進めます。

サービタイゼーションを推進する5つのステップを示した図。顧客課題の把握、サービス設計、収益モデル設計、運用体制の整備、PoC(概念実証)の流れを整理している。

各ステップでは、「誰が」「何を検討するか」「どのような成果物を作成するか」を明確にし、前のステップの成果を次のステップにつなげながら進めることがポイントです。

  1. 顧客課題の把握
    • 誰が行うか:営業部門、マーケティング部門、経営企画
    • 検討内容:顧客が日々の業務で抱えている課題を整理する(例:設備の突発停止、熟練工不足によるオペレーションミスなど)
    • 成果物:顧客課題一覧マップ
  2. サービス設計
    • 誰が行うか:開発部門、保守・サービス部門
    • 検討内容:ステップ1で把握した課題に対し、自社の技術や製品を活用してどのようなサービスを提供するかを設計する(例:遠隔サポート、操作トレーニング、定期点検パックなど)
    • 成果物:サービスメニュー定義書
  3. 収益モデル設計
    • 誰が行うか:経営企画、財務・経理部門、営業責任者
    • 検討内容:価格体系(月額固定、従量課金など)や原価構造、契約期間、想定解約率などを踏まえ、継続的に利益を確保できる収益モデルとして妥当かを確認する
    • 成果物:料金プラン表、収益シミュレーションシート
  4. 運用体制の整備
    • 誰が行うか:情報システム部門、営業・保守・カスタマーサポート部門の責任者
    • 検討内容:顧客情報や保守履歴、利用状況、問い合わせ履歴などを一元管理し、部門間で円滑に共有・活用できる運用体制を整備する
    • 成果物:顧客情報管理運用ルール
  5. PoC(概念実証)の実施
    • 誰が行うか:プロジェクトチーム、協力的な既存顧客
    • 検討内容:実際にサービスを試行し、運用負荷や顧客満足度、契約継続率、収益性などを検証する
    • 成果物:実証実験評価レポート、改善アクションプラン

5つのステップは、それぞれ独立した作業というわけではありません。

顧客課題の把握から、PoCによる検証までを一連のプロセスとして進め、得られた結果を反映しながらサービスをブラッシュアップしていくことが重要です。

とくに、顧客課題の把握とPoCによる検証は、顧客ニーズとずれたサービス設計を防ぐうえで欠かせません。

サービタイゼーション推進のポイント

5つのステップを進めるうえで注意したいのは、本来重視すべき視点を見失わないことです。

サービタイゼーションの推進では、自社の都合ではなく「顧客が本当に求める成果から逆算して設計できているか」という視点が欠かせません。

ここでは、推進にあたって押さえておきたい4つのポイントを紹介します。

顧客が求める成果を明確にする

設備や製品を販売すること自体ではなく、「設備停止時間を減らしたい」「生産性を向上させたい」「保守負担を減らしたい」など、顧客が最終的に実現したい成果を明確にすることが重要です。

成果が曖昧なままサービスを設計すると、提供価値が伝わりにくく、収益化も難しくなります。

無償対応と有償サービスの境界を整理する

「何をサービスとして提供するか」だけでなく、「どこまでを標準対応として、どこから有償サービスにするか」をあらかじめ整理しておく必要があります。

境界が曖昧なままだと、現場の負担が増えるだけで収益化につながらないリスクがあります。

スモールスタートで検証する

最初から全顧客へ展開するのではなく、一部の既存顧客で試し、運用負荷や顧客の反応を確認しながら改善していくことが大切です。

部門間で連携できる運用体制を構築する

営業・保守・カスタマーサポートが同じ情報をもとに判断し、継続して運用できる体制を整えることもかかせません。

サービタイゼーションでは、営業・保守・カスタマーサポートが長期にわたって同じ顧客に関わるため、部門ごとに情報が分断されると継続的な価値提供が難しくなります。
そのため、顧客情報や保守履歴、問い合わせ履歴を一元管理し、部門間で円滑に共有・活用できる仕組みが重要です。

CRMは、こうした運用体制を実現する代表的な手段の一つです。

製造業で顧客情報を部門間で共有し、現場に定着させる具体的な考え方については「製造業向けCRM導入ガイド 失敗しない選び方と定着のポイント」も参考にしてください。

サービタイゼーションに関するよくある質問

Q
サービタイゼーションとサブスクの違いは何ですか?
A

サブスクリプションは、定額制などの「課金方式」です。一方、サービタイゼーションは、製品をベースにサービスを組み合わせて価値を提供する事業モデルを指します。サブスクリプションは、サービタイゼーションを実現する手段として活用されることがあります。

Q
サービタイゼーションとアフターサービスの違いは何ですか?
A

アフターサービスは、製品販売後の保守や修理対応を指すことが一般的です。一方、サービタイゼーションは、保守対応にとどまらず、顧客の成果創出を継続的に支援する考え方です。アフターサービスは、その価値提供を支える取り組みの一つといえます。

Q
サービタイゼーションはどのような企業に向いていますか?
A

保守・点検・運用支援など、納品後も顧客との接点を持ちやすい製造業に適しています。特に、設備機器や産業機械など、継続的なメンテナンス需要がある製品を扱う企業では導入しやすい傾向があります。

Q
中小製造業でも取り組めますか?
A

保守・点検・運用支援など、納品後も顧客との接点を持ちやすい製造業に適しています。特に、設備機器や産業機械など、継続的なメンテナンス需要がある製品を扱う企業では導入しやすい傾向があります。

Q
 IoTがなくても取り組めますか?
A

取り組めます。サービタイゼーションは、IoTの導入そのものではなく、顧客へ継続的な価値を提供することが目的だからです。センサーを活用した遠隔監視はサービスを高度化する手段の一つですが、まずは保守履歴や問い合わせ履歴を整理し、顧客への継続的な支援につなげることからでも十分に始められます。

Q
サービタイゼーションが失敗する原因は何ですか?
A

失敗の多くは、顧客ニーズに合わないサービス設計や、収益モデル・運用体制の準備不足によって起こります。まずは小規模なPoC(概念実証)から始め、顧客の評価を確認しながら改善を重ねていくことが重要です。

まとめ

サービタイゼーションは、製品を販売して終わるのではなく、サービスを通じて顧客の成果を継続的に支援することで、収益の安定化や顧客との関係強化、価格競争からの脱却を目指すビジネスモデルです。

導入を検討する際は、まず既存顧客が納品後にどのような課題を抱えているのかを把握し、自社が提供できる価値を洗い出してみましょう。そのうえで、保守・運用支援・改善提案など、サービスとして展開できる領域を検討することが重要です。

サービタイゼーションは大規模な変革から始める必要はありません。

既存の保守契約や定期点検サービスなどを起点に取り組み、顧客の反応や収益性を確認しながら、段階的にサービスを発展させていくことが成功への近道です。

また、こうした取り組みを定着させるには、部門間での情報共有や運用体制の整備も欠かせません。
自社のサービタイゼーション推進に向けて、運用体制の構築や情報共有の仕組みづくりをご検討の際はお気軽にお問い合わせください。