「この案件、○○さんしか分からない…」「あの顧客の対応、どう進めればいい?」――営業の現場で、こんな声が聞こえることはありませんか? 属人化が進むと、情報が個人の頭の中でとどまり、業務の引き継ぎやチームの成長が難しくなります。
では、どうすれば属人化を防ぎ、営業組織としての力を高められるのでしょうか? その答えが 営業プロセスの可視化 です。営業活動を明確に整理し、情報共有を仕組み化することで、誰もがスムーズに業務を進められる環境を作ることができます。
本記事では、営業の属人化が生じる原因とそのリスクを整理し、営業プロセスを可視化するための具体策 を解説します。属人化の課題に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
営業の属人化、なぜ問題?
営業チーム内で「この案件は○○さんしか対応できない」「この顧客情報は△△さんしか知らない」といった状況はありませんか? こうした 営業の属人化 は、一見すると優秀な営業担当が活躍しているように見えますが、実は組織全体にとって大きなリスクとなります。
属人化が引き起こす3つの問題
では具体的に属人化すると何が問題なのか、代表的なものが以下の3つです。
- 引き継ぎが困難になり、業務が停滞する
営業担当が異動や退職をすると、その人が持っていた情報やノウハウが失われ、顧客対応が滞るリスクがあります。特に、案件の進捗や顧客との関係性が可視化されていないと、新しい担当者がスムーズに引き継ぐことができません。
- チーム全体の営業力が向上しない
営業スキルやノウハウが個人に依存していると、チーム全体で学び合う機会が減り、組織としての営業力向上が難しくなります。属人化を防ぎ、成功事例を共有することで、営業スキルの底上げが可能になります。
- 顧客対応の一貫性が欠け、信頼を損なう
営業担当ごとに提案の仕方や対応方法が異なると、顧客は「会社」としての一貫したサービスを受けられず、不安を感じることがあります。特に、長期的な取引を行う企業では、対応のブレが顧客満足度の低下につながる可能性があります。
属人化を防ぐために何をすべきか
営業の属人化を解消するためには、営業プロセスの可視化が欠かせません。
具体的には「営業フローの標準化」や「チーム内の情報共有」「デジタルツールの活用」などが有効です。
営業プロセスの可視化、何から始める?
営業の属人化を防ぐには営業プロセスを「見える化」することが重要です。
しかし、「見える化」しろといわれても「どこから手をつければいいのかわからない」と悩む企業は少なくありません。
営業プロセスの可視化を進めるには、実はしっかりこなすべきステップがあります。
現状の営業プロセスを整理する
まずは自社の営業活動がどのように進められているかを明確にしましょう。
属人化が進んでいる組織では、担当者ごとに異なるやり方が定着しており、誰がどのように営業を進めているのかが見えにくくなっているケースが多くあります。
具体的な整理方法ですが、以下のステップで進めるとスムーズです。
- 営業フローを可視化する(業務の流れを明確にする)
まず、営業活動の全体像を把握するために、営業フローを図示化します。ホワイトボードやフローチャートツールを使って、各フェーズを整理するとよいでしょう。
- リード獲得(Web問い合わせ、展示会、紹介、テレアポなど)
- 初回コンタクト(電話・メール・訪問)
- ヒアリング・課題整理(顧客のニーズを確認)
- 提案・商談(資料作成・見積もり提示)
- クロージング(契約締結・発注)
- アフターフォロー(導入サポート、関係維持)
このように営業プロセスを段階ごとに分解することで、どの部分に課題があるのかを明確にできます。
- 各フェーズでの行動や判断基準を洗い出す
営業活動は単に「商談をする」だけでなく、各フェーズでどのようなアクションをとるべきかが重要ですよね。例えば以下のような具体的な要素を整理します。
- リード獲得:どのチャネル(Web、紹介、テレアポなど)が効果的か?
- ヒアリング:どの情報を必ず確認し、記録するべきか?
- 商談フェーズ:提案資料や見積もりの作成手順は統一されているか?
- クロージング:成約率を高めるための最適なアクションは?
これらのポイントを洗い出すと「営業担当者ごとに異なるやり方」が明確になり、標準化すべきポイントが見えてきます。
- 各担当者の実際のやり方をヒアリングする
営業プロセスを整理する際に欠かせないのが、営業担当者からのヒアリングです。
現場で実際にどのような営業活動が行われているかを確認し、属人的になっている部分を特定します。
ヒアリングの質問例- 商談の進め方や判断基準はどのように決めているか?
- 顧客情報の管理方法は?(メモ、Excel、CRMなど)
- 受注につながる成功パターンは?
- うまくいかなかった案件の共通点は?
- 他の営業担当者と情報をどのように共有しているか?
ヒアリングをもとに営業の成功パターンやボトルネックを明確にすることが重要です。
- 課題を整理し、可視化の優先順位を決める
現状の営業フローを整理し、ヒアリングを行ったら、次に「どこから改善すべきか」を決めていきます。
たとえば…- 営業担当者ごとにやり方が違い、新人が育ちにくい → 標準的な営業プロセスのマニュアル化が必要
- 情報が個人の手元にあり、チームで共有されていない → CRM/SFAツールの活用を検討
- 案件の進捗が不透明で、どこに課題があるかわからない → KPIを設定し、進捗管理を強化
このように課題をリストアップし、優先度の高いものから着手することで、効果的に営業プロセスの可視化が進められます。
営業プロセスの可視化、何から始める?
営業担当者が個人で持つ顧客情報やノウハウを組織全体で活用できるようにすることで、スムーズな業務遂行や営業力の底上げが可能になります。
しかし、「情報共有の重要性は分かっているが、実際にはうまく機能していない」と感じている企業も少なくありません。
では、どのようにして効果的な情報共有の仕組みを整えるべきでしょうか?
情報共有がうまくいかない原因とは?
営業チームで情報共有が進まない原因はなんでしょうか。よくある課題として、以下のようなものがあります。
- 営業担当者ごとに管理方法が異なる(Excel、手帳、メモアプリなどバラバラ)
- 忙しさのために記録する時間がない(商談後の情報入力が後回しになる)
- 「情報は自分の武器」という意識が根強い(共有に対する抵抗感)
- どこにどんな情報があるのか分かりづらい(検索性が悪い)
これらの課題を解決するためには「情報共有の仕組み」×「共有を促す文化」の両方を整えることが重要です。
具体的な情報共有の仕組みづくり
情報共有をスムーズに進めるための具体的な方法を紹介します。
①営業データの一元管理を徹底する
営業担当者ごとに管理方法が異なると、情報が分散し、属人化が加速します。これを防ぐために、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)を活用し、営業データを一元管理しましょう。
- 顧客情報、商談履歴、提案内容などを誰でもすぐにアクセスできる状態にする
- スマホやタブレットで簡単に入力・確認できる仕組みを用意する
- 過去の商談履歴を蓄積し、営業戦略の改善に活かす
② 情報入力を負担にしない仕組みを作る
「忙しくて記録する時間がない」という理由で情報共有が進まないケースは、どこの企業でも一度は見聞きしたことがあるのではなでしょうか。情報入力は簡単にする工夫が必要です。
- 定型フォーマットを用意し、最低限の入力項目を統一する(例:商談結果を3行で記録)
- 音声入力や自動ログ機能を活用し、入力負担を軽減する
- 週次ミーティングで「口頭共有+記録」をセットで行う
③ 情報共有のメリットを体感できる仕組みをつくる
「情報は自分の武器」という意識をなくすためには、情報共有のメリットを実感できるようにすることが大切です。
- 成功事例をデータベース化し、チーム全体で活用(「過去の成功事例がすぐに見つかる!」という体験を増やす)
- 共有された情報をもとに、マネージャーがアドバイスを提供(「記録した情報が役立った!」という実感を持たせる)
- 情報共有が評価につながる仕組みを導入(共有頻度や内容をKPIに設定)
こうした工夫をすることで、「情報を共有すると自分にもメリットがある」と実感できるようになります。
④ 情報共有の文化を根付かせる
どんなに優れたツールを導入しても、「情報共有をしよう」という意識がなければ形骸化してしまいます。そのため、組織全体で情報共有の文化を根付かせることが重要です。
- 定期的な振り返りを実施する(週次・月次で「どの情報が役に立ったか」を確認)
- 上司が率先して情報共有を行う(マネージャー自ら商談情報をオープンにする)
- 部門を超えた共有の場をつくる(営業とマーケティング・カスタマーサポートなどが情報を交換)
情報共有の文化を根付かせることで、組織全体の営業力が底上げされ、属人化を防ぐことができます。
デジタルツールを活用して効率化する
営業の属人化を防ぎ、プロセスを可視化するためには、デジタルツールの活用が不可欠です。紙のメモやExcel管理では、情報が分散しやすく、担当者が不在になった際に対応が滞ることも少なくありません。
デジタルツールを活用すれば、営業情報の一元管理、リアルタイムな共有、業務の自動化が可能になり、チーム全体の営業力を向上させることができます。
営業効率化に役立つデジタルツール
近年、多くの企業が営業プロセスの最適化を目的として、CRMやSFAなどのツールを導入しています。
CRM(顧客管理システム)で営業情報を一元管理
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客情報、商談履歴、対応状況などを一元管理できるツールです。
- 顧客ごとの商談履歴や対応状況をリアルタイムで確認できる
- 過去のデータを活用して、より効果的な営業活動が可能になる
- 営業担当者の異動や退職による情報の引き継ぎがスムーズになる
- 入力負担を軽減するため、スマホ・タブレット対応のツールを選ぶ
- 商談後すぐに記録できるよう、シンプルな入力フォーマットを設定する
- 定期的にデータを分析し、営業戦略の改善に活かす
SFA(営業支援ツール)で営業活動を可視化
SFA(Sales Force Automation)は、営業プロセスを可視化し、案件の進捗管理や業務効率化を支援するツールです。
- 商談のステータスをリアルタイムで共有できる
- 各営業担当者の活動状況を把握し、適切なアドバイスができる
- 営業チーム全体のパフォーマンスをデータで分析・改善できる
- 営業プロセスに合ったカスタマイズが可能なツールを選ぶ
- KPI(受注率、案件数など)を設定し、定期的に振り返る
- 営業会議でSFAのデータを活用し、チーム全体で課題を共有する
デジタルツール導入の成功ポイント
ただツールを導入するだけでは、営業の属人化を解決することはできません。「ツールを活用する文化を定着させる」ことが成功の鍵となります。
Point①ツールの選定は現場の意見を取り入れる
営業担当者が「使いにくい」と感じると、ツールは定着しません。実際に使う現場の意見を反映し、業務にフィットするツールを選ぶことが重要です。
Point②使いこなせるよう、社内トレーニングを実施する
ツールを導入したら、マニュアルの作成や研修を実施し、全員がスムーズに使える環境を整えましょう。定期的に勉強会を開き、「どのように活用すれば業務が楽になるのか」を伝えることで、導入効果が高まります。
Point③ツールの運用ルールを明確にする
「入力がバラバラでデータが活用できない」という事態を防ぐために、入力ルールを統一することが大切です。
- 商談記録は「〇〇フォーマット」に従って入力する
- 顧客情報は「初回アプローチ時」に必ず登録する
- 案件の進捗は「週1回更新」する
こうしたルールを明確にし、定期的に運用状況をチェックすることで、ツールの活用が定着しやすくなります。
デジタルツールの活用によって、営業プロセスを可視化し、属人化を防ぐことが可能になります。特に、CRM・SFAの活用によって、情報の一元管理、営業活動の可視化ができる点は大きなメリットです。
脱属人化対策で営業チームの底上げを目指す
属人化対策に有効な「営業プロセスの可視化」は、単なる業務の整理ではなく、営業活動の質を向上させ、組織全体の成果を安定させるための重要な施策です。
営業のやり方を統一することで成果のバラつきを減らし、商談の進捗を明確にすることで上長・上司は適切なフォローが可能になります。また、顧客情報を一元管理することで担当者の移動や引継ぎ時にもスムーズな対応ができ、営業活動の継続性が保たれます。
CRMやSFAを活用し、蓄積されたデータを活用すれば営業戦略の精度も向上し、より効果的なアプローチも実現します。
こうした取り組みは、単に営業担当者の負担を軽減するだけでなく、組織全体の営業力を底上げにつながります。情報共有の仕組みやデジタルツールをうまく活用しながら、属人化を防ぐだけでなく、成果を最大化する営業チームを目指しましょう。
新しい営業スタイルにフィットしたシステム導入で商品リピート率が向上したケース
営業活動を“勇気づける”営業支援アプリの共同開発・導入