企業の業務が円滑に進んでいるように見えても、実は「特定の社員がいないと回らない」という状況に陥っていませんか?例えば、「この業務はAさんしかできない」「Bさんが休むとプロジェクトが進まない」といったケースです。こうした状態は「属人化」と呼ばれ、企業の成長を妨げる要因になり得ます。

属人化が進むと、業務の引き継ぎが難しくなったり、社員の退職によって重要な知識やノウハウが失われたりするリスクがあります。そのため、早い段階で対策を講じることが重要です。

本記事では、属人化の基本的な概念から、その発生原因、問題点、解決策まで詳しく解説します。CRMツールの活用も交えながら、実践的な対策方法をご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

属人化とは?

企業の業務において、「この仕事は〇〇さんにしかできない」「△△さんがいないと対応できない」といった状況が生じることがあります。こうした状態を「属人化」と呼びます。特定の社員が持つ知識やスキルに業務が依存してしまうと、その人が休んだり退職したりした際に、業務が滞るリスクが高まります。

特に中小企業や専門性の高い業務では属人化が発生しやすく、組織全体の生産性や成長に悪影響を及ぼす可能性があります。では、属人化とは具体的にどのような状態を指すのでしょうか?

属人化の基本的な概念

「属人化」とは、特定の業務や知識が一部の担当者に依存し、その人がいなければ業務が回らなくなる状態を指します。

例えば、以下のような状況が該当します。

  • 営業担当Aしか顧客情報を把握していない → Aが休むと商談が進まない
  • 経理担当Bだけが請求処理の方法を知っている → Bが退職すると業務が滞る
  • システム管理担当Cだけが社内ツールの設定方法を知っている → Cが不在だとトラブル対応ができない

このような属人化が進むと、企業全体の業務効率が低下し、リスクが増大します。

なぜ属人化は起きるのか?

「属人化をなくしたい」と考えていても、現場ではなかなか解消できないのが実情です。むしろ、気づいたときにはすでに特定の人に業務が集中してしまっていることも多いでしょう。

なぜ、属人化は自然と生まれてしまうのでしょうか?その背景には、日々の忙しさや企業の成長スピード、そして「つい後回しにしてしまう」組織の習慣が関係しています。

属人化が起こりやすい要素

属人化は、以下のような要因によって発生しやすくなります。

業務の引き継ぎが不十分

新しい社員への引き継ぎが行われず、経験者だけが業務を知っている状態になると、業務が属人化しやすくなります。

業務のマニュアルがない

口頭や経験則で業務が進められ、明文化されたマニュアルがないと、業務が個人に依存してしまいます。

特定のスキルや知識が個人に集中

例えば、プログラミングや特定のシステム運用などの専門スキルを持つ社員が一人しかいない場合、その人がいないと業務が回らなくなります。

長年の経験が必要な業務

長期間勤務している社員ほど、経験をもとにした独自のやり方を持っており、新しい人がすぐに対応できない場合があります。

属人化、なぜ悪い?

「特定の人にしかできない業務があるのは、むしろ強みでは?」と思う方もいるかもしれません。確かに、高度な専門知識や経験を持つ社員が活躍するのは企業にとって大きなメリットです。

しかし、その人しかできない状態が続くとどうなるでしょうか?

もし急に休んだら?異動や退職したら?残されたメンバーは業務を引き継げず、企業の生産性は大きく低下してしまいます。

では、そもそも「属人化」と「スペシャリストとしての専門性」は何が違うのか? その違いを整理しながら、属人化の問題点を掘り下げていきましょう。

属人化とスペシャリストのちがい

属人化とスペシャリストの違いは、「業務の共有ができているかどうか」です。

項目属人化スペシャリスト
知識の共有個人に依存し、
他の人が分からない
専門知識を持つが、
共有が可能
業務の柔軟性その人がいないと業務が滞る他のメンバーと補完し合える
組織への影響リスクが高い組織全体の成長につながる

スペシャリストは、専門知識を持ちながらも、その知識を他の社員と共有することができます。一方、属人化は「特定の人にしかできない状態」になっており、業務が停滞するリスクを生みます。

属人化が退職の理由に?

属人化が進むと、社員の負担が増し、退職の原因になることもあります。例えば、「特定の業務を自分しかできない」という状況が続くと、休暇が取りづらくなったり、プレッシャーが大きくなったりすることで、仕事のモチベーションが低下します。

また、属人化された業務を抱えた社員が退職すると、後任が業務を引き継ぐのに時間がかかったり、引継ぎがほぼない状態で退職してしまったり、大きな混乱をまねくことも少なくありません。

属人化は仕組みや制度で解消しない限り、新たに人を採用しても新人に仕事が回らない、スキルアップの機会がないといった状況が続き、「この会社では成長ができない」と感じて新入社員が短期間で辞めてしまい、「採用しても人が定着しない」という悪循環に陥ります。

どうすれば属人化を解消できるか

「属人化をなくさなければ」と思っても、いざ対策を考えようとすると、「どこから手をつければいいのかわからない…」 という状況に陥りがちです。

「業務のマニュアルを作るべき?」「情報共有の仕組みを変えたほうがいい?」など、解決策はいくつも考えられますが、そもそもなぜ属人化が進んでしまうのかを理解しなければ、本質的な解決にはつながりません。

まずは、属人化が進む3つの原因を整理し、自社の課題を明確にしていきましょう。

属人化が進む3つの原因

属人化が進んでしまう企業には、いくつか共通する特徴があります。特に、情報共有の仕組みが整っていない企業や、社員の育成に十分な時間を割けていない企業では、属人化が発生しやすくなります。こうした企業では、特定の社員に業務が集中し、結果として「その人がいないと仕事が回らない」という状況になりがちです。

情報共有の仕組みがない

チーム内で業務情報が共有されておらず、一部の社員だけが知っている状態。

教育・研修の不足

新しい社員が育たず、特定の人だけが業務を担当する状況が続いている。

マニュアルや業務プロセスの可視化が不十分

口頭での指示や経験に頼る業務が多く、他の社員が理解しづらい状態になっている。

つまり、これらの原因を解消すれば、属人化を防ぎ、誰でも業務を引き継げる仕組みを作ることが可能です。そのためには、業務の標準化やナレッジマネジメントの導入が不可欠になります。次の章では、属人化を解消する具体的なステップについて詳しく見ていきましょう。

属人化解消の具体的なステップ

属人化をなくすには、「とりあえず情報共有を強化しよう」といった場当たり的な対応では不十分です。根本的な解決には、業務を標準化し、組織全体で知識を共有できる仕組みを整えることが重要です。

とはいえ、いきなりすべてを変えるのは現実的ではありません。属人化解消には、「何から始めるべきか?」を明確にし、着実にこなしていくべきステップがあります。

業務の標準化とマニュアル化

属人化を防ぐためには、業務の標準化が不可欠です。業務フローを明確にし、誰でも対応できるようにマニュアルを作成しましょう。

具体的には、次のような手順を取ると効果的です。

  • 業務ごとに「どのような手順で進めるのか」を可視化する
  • システムやツールを活用して業務の記録を残す
  • 定期的にマニュアルを更新し、常に最新の状態に保つ

ナレッジマネジメントの導入

ナレッジマネジメントとは、企業内の知識やノウハウを共有し、活用できるようにする取り組みです。CRMツールや社内Wikiを活用することで、情報の一元管理が可能になります。

例えば、顧客対応のノウハウを社内の共有フォルダやCRMに記録しておくことで、誰でも必要な情報にアクセスできるようになります。これにより、「この業務はAさんしか知らない」という状況を回避できます。

チームでの情報共有の仕組み

情報共有の仕組みを作ることで、属人化を防ぐことができます。例えば、定期的なミーティングを開催し、業務内容や進捗をチーム全体で把握することが重要です。

効果的な情報共有の方法としては、次のようなものがあります。

  • 朝礼や週次ミーティングで業務の進捗を共有
  • チャットツールやプロジェクト管理ツールを活用して情報をリアルタイムで共有
  • 業務の担当者をローテーションし、複数人が対応できるようにする

属人化解消の具体的なステップ

属人化は、企業の生産性や成長を妨げる大きな課題です。しかし、CRMなどの情報共有ツールを導入し、業務の標準化やナレッジマネジメントを進めることで、解消することが可能です。

属人化解消のポイント
  • 業務の標準化 → マニュアルや業務フローを作成する
  • ナレッジ共有 → CRMを活用し、情報をチームで管理する
  • 情報共有の仕組みを作る → 共有ツールを導入し、チームで業務を進める

属人化を解消し、組織全体の生産性を向上させるために、まずはCRM導入を検討してみてはいかがでしょうか?

導入事例:ベテラン依存の属人化を解消

建物総合メンテナンスを行う株式会社インデスは、多様になるサービスと比例して増加する顧客管理や業務管理に困っていました。紙やExcelによる、属人化した管理体制からの脱却の為に選定されたシステムの中で選ばれたのが様々な業務・業種にフィットするF-RevoCRMでした。F-RevoCRMを導入した理由、導入後の効果などをインタビュー形式で紹介しています。