企画が通らない理由は「合理性」だけじゃない
企画を考えるとき、多くの人は「正しいことを伝えれば通る」と思いがちです。でも、現実はそんなに単純ではありません。
社内には、いろいろな「力学」があります。上司や役員の好み、社内政治、誰が発言するか……そんな要素が、企画の成否を左右することも少なくありません。
特にCRM/SFAのようなシステム導入企画は、「営業部の効率化」「顧客管理の強化」など、関係する部署が多岐にわたります。すると、各部署の意見が交錯し、企画の方向性がぶれてしまうことも。
では、どうすれば「合理的な企画」を「実際に通る企画」にできるのでしょうか? 今日は、そのヒントを探っていきます。
「声の大きい人」に引っ張られるな!問題分析の重要性
CRMやSFAの企画を進めるうえで、避けて通れないのが社内の「力学」です。
たとえば、こんな経験はないでしょうか?
- 社内で影響力のある人の意見が、やたらと優先される
- 企画の内容ではなく、「誰が提案したか」で評価が変わる
- 「とりあえず現場の意見を反映して」と言われ、方向性がブレる
もちろん、現場の声を取り入れることは大切です。しかし、「声の大きい人の意見=会社にとって最適解」とは限りません。むしろ、その影響を受けすぎると、本来の目的から外れてしまうこともあります。
では、どうするべきか?
ポイントは 「会社全体の視点を持つこと」 です。
「通る企画」にするためのバランス感覚
企画を通す側としては、社内の声を聞きつつも、「この提案が会社にとってどういう意味を持つのか?」を軸に据えなければなりません。そのためには、客観的なデータや市場の動向を示しながら、「なぜこれが必要なのか」を納得させる工夫が必要です。
そのため企画担当者には、次のような「バランス感覚」が求められます。
- ロジックを崩さずに、社内の力学を考慮する
- 上司の好みを把握しつつ、根拠のある提案をする
- 合理的な説明と、納得感を両立させる
「通すこと」だけを目的にすると、結局中身のない企画になってしまいます。
しかし、社内の意見を無視して合理性だけを押し通そうとしても、結局企画は通りません。この絶妙なバランスをどう取るかが、企画担当者の腕の見せどころです。
企画書のフォーマットに振り回されるジレンマ
「部長には詳細なデータを載せろと言われたのに、役員にはシンプルにまとめろと言われた……」
こんなジレンマに陥ったことはありませんか?
企画書のフォーマットや表現の仕方は、立場によって求められるものが違います。
例えば…
部長:「細かいデータがたくさん入っているほうがいい」
常務:「パッと見てわかるシンプルなスライドにしてほしい」
専務:「とにかく費用対効果だけ説明してくれればいい」
この「フォーマット問題」、多くの企業でよくある話です。本来なら、会社として統一のフォーマットを作ってほしいところですが、現実ではそううまくいかないことも多いです。
「三段構え」で対応するとスムーズ
この場合、最も有効な解決策は、「読み手ごとにアプローチを変える」ことです。
詳細版(部長向け):データ満載のしっかりしたレポート
要約版(常務向け):スライド中心の簡潔な説明資料
財務版(専務向け):費用対効果にフォーカスした資料
多少手間はかかりますが、「決裁者に合わせた資料」を用意することで、スムーズに承認される可能性が高まります。
CRM/SFA企画に必要な「外」と「内」の視点
市場や顧客の視点を「外部」、社内の視点を「内部」としたとき、CRM/SFAの導入ではそれぞれどちらの視点が重要だと思いますか?
実は、この2つの視点はどちらか一方あればいいというわけではありません。
しかし、CRMの導入では「内部の視点」が抜けるケースが多く、逆にSFAでは「外部」の視点が抜けているケースが多いです。
「外の視点」:市場・顧客をどう見るか
CRMの企画では、「市場」や「顧客」といった外部の視点ばかりが強調され、社内の視点(内の視点)が抜け落ちることがあります。
例えば、一時期流行した「One to Oneマーケティング」は、「顧客一人ひとりに最適なアプローチをする」という考え方です。これは理想的に聞こえますが、実際に運用するためには、社内のオペレーションや体制を整えなければ実現できません。そうなると、かなり大がかりなプロジェクトになってしまいますね。 つまり、「顧客に合わせたマーケティングを!」という理想を掲げても、実際に社内で対応できる仕組みがなければ、企画倒れになってしまうのです。
CRMの導入では、「外の視点」だけでなく、「内の視点」もセットで考えることが重要になります。
「内の視点」:営業組織のリアルを見つめる
一方で、SFAの企画では、営業の管理や効率化といった「内の視点」ばかりが強調され、「外の視点」が抜け落ちる傾向があります。
例えば、「訪問件数を増やせ」「営業プロセスを徹底管理せよ」といった指示。しかし、これらはあくまで社内の都合であり、顧客視点が考慮されていなければ、単なる「押し付け営業」になりかねません。
SFAを導入する際は、「営業の効率化」だけに目を向けるのではなく、「顧客にとって価値のある営業活動とは何か?」を考えながら設計することが重要です。
企画担当者に必要な3つのスキル
CRM/SFAの企画を通すために、企画担当者が意識すべきポイントは次の3つです。
- 問題を客観的に分析する力
「声の大きい人」に惑わされず、データをもとに本質的な課題を見極める。
- 社内の力学を読み、企画を通す技術
合理性だけではなく、「どうすれば決裁者に納得してもらえるか?」を考えながら企画を作る。
- 「外」と「内」の視点をバランスよく取り入れる
市場や顧客の視点(外)と、社内の営業組織の実態(内)をうまく調和させる。
企画を「正しく」作るだけでは不十分。「通る企画」にするために、ぜひこれらのポイントを意識してみてください。
「正しい企画」よりも「通る企画」を!
CRM/SFAの導入を成功させるために、あなたの企画力を磨いていきましょう。