さて、今回はCRM/SFA導入において企画のまとめ方に関して書きたいと思います。
前回も書いたとおり、CRM/SFA導入の成否はツール選定の前、企画段階でほぼ決まる。と書きましたが、企画段階のアウトプットは「企画書」になりますので、最初にダメな企画書について書きたいと思います。CRM/SFA導入以外でもここは共通だと思って頂いて構いません。
” 「こんな企画書はダメ!!」 ”
ツール導入のメリットばかりを並べている
要は、ベンダーの受け売りです。このシステムを導入すればこんな幸せになれます、みたいなことを並べている企画書……説明は不要ですね。これは駄目です。
ちなみに典型的なのは、経営者のメリット、現場のメリットなどと書かれているものです。
特に経営者側に対して、「保有案件の状況がリアルタイムで解ります」「営業の訪問件数(状況)が解ります」「ターゲット顧客へのアプローチ状況が解ります」「案件のパイプラインが分析できます」etc. と書かれていたりしますが、「製品パンフレット=企画書」ではありません。
言葉が曖昧、抽象的
「営業力の強化」「顧客満足度の向上」「業務の効率化」「活動の底上げ」「プロセスマネジメント」……いろいろありますが、たとえば、あなたがサッカーチームのメンバーだとして、監督から「攻撃力強化する必要がある!」とだけ指示されても困りますよね。
「なるべくパスを繋いで持ち込むのか」「ロングレンジからでもシュートを狙う」「ワイドに展開して、サイドから攻撃する」「ドリブルで中央突破を図る」など、具体的にしてくれないと……困ります。
言葉がバラバラ
2番と似ていますが、よくあるのが、タイトルや目的には「営業力強化の為の改革」となっているのに、本章では「改善」や「変革」になってしまっている。他にも「業務プロセスを見直す」と「業務フローを変える」「仕事のやり方を変える」とかページが変わる度に言葉使いが変わるケースなど、言葉がバラバラに使われている企画書……。
「改革」と「改善」では言葉の意味が違いますから、どのレベル感で仕事のやり方を変えるのか、印象が全く異なってきます。同様に「業務プロセス」と「業務フロー」も意味が違います。言葉使いが統一されていないと「結局何がしたいの?」と思われてしまいます。
「なるべくパスを繋いで持ち込むのか」「ロングレンジからでもシュートを狙う」「ワイドに展開して、サイドから攻撃する」「ドリブルで中央突破を図る」など、具体的にしてくれないと……困ります。
対象範囲や期間が曖昧
「営業力強化」であっても実際、会社の業務というのは一部門だけで回っている訳ではありません。
たとえば「営業力を強化するには、まずは新規開拓をもっと積極的に行っていく必要がある」と仮説を立てた場合は、新規顧客から受注を取ってきたときにインセンティブを高めに評価する、などの施策が必要になってくるかも知れません。そうすると「人事」も絡んできますので範囲は「営業部」だけではなくなります。
あるいは「営業が既存客からの保守・サービスの窓口になっていて、新規に割く時間がない」といった場合もあるかもしれません。その場合も範囲は「営業部」だけではなくなります。
とはいえ部門や業務領域を越えての取組みは非常に大変ですから、範囲・期間を明確にすることはとても重要です。
ロジックが無い
企画自体に、根幹となるロジックが無いため、ページ構成に脈略がないことがあります。たとえば……
- CRM/SFAツールの紹介
- 顧客DBの構築の重要性
- 現状の顧客管理のやり方
- 営業担当者からの要望事項
- 営業のプロセスについて
- CRMの運用体制
- 体制・費用
- 期待効果
このようなページ構成になっていると、「何をどう変えて、何を目指すのか?」がまったく伝わりませんし、各ページのつながりもありません。
目的が整理できていない
これもロジックが未整理であることが原因です。たとえば……
- CRM/SFAツールの紹介
……目的ではなく「作業」の話ですね。 - 顧客DBの構築の重要性
……これは目的として適しています。 - モバイルの活用
……目的ではなく「手段」の話です。 - 部門間連携を実現
……目的ではなく「結果」の話、でしょうか?
「営業力強化」ですから、「目的」はそれに沿ったものである必要があります。
「CRM/SFAを導入する際には「目的」をしっかりと設定する事が重要だ」という話が良く出てきますが、間違った「目的」を設定しても間違った道しか進めませんのでご注意を。
このようなページ構成になっていると、「何をどう変えて、何を目指すのか?」がまったく伝わりませんし、各ページのつながりもありません。
細か過ぎる
やたらと細かいことばかり記載されていると、本題が何なのかが伝わらなくなります。企画の重要な「幹」(ロジック)をしっかりと作り、必要以上に情報を盛り込まないことが重要でしょう。
このようなページ構成になっていると、「何をどう変えて、何を目指すのか?」がまったく伝わりませんし、各ページのつながりもありません。
まとめ
以上7つ挙げましたが、いかがでしょうか?
ちなみに製造業などでは、企画書は1枚のA3用紙にまとめるという文化があり、個人的にあれはとても難しい仕事です。新聞の構成を考えるのと同じだとは思うのですが、やはり職人的センスがいるというか、作り慣れていないと自分の伝えたいことをどうまとめれば良いのか、とても悩みます。
企画書は作ることでなく伝えることが目的ですから、A3に収まる程度のボリュームにまとめることも、大切なのかもしれません。
少し話がそれてしまいましたが、今回はダメな企画書の例を挙げました。次回からは、実際にどのように作っていくべきか? を書いていきます。
企画をしっかりと組み立てなければ、CRM/SFAの導入を成功に導くには難しい。だが、企画書を作る事自体があなたの仕事の目的でもない。企画書をまとめる事の意味と意義を良く考る必要がある