「CRM」と聞いて、あなたはどんなイメージを思い浮かべますか?
「顧客管理ツール」「営業支援システム」「マーケティングの一環」——。どれも間違いではありませんが、時代とともにCRMの意味や役割は大きく変化しています。
今やWebやSNSが顧客との接点として欠かせない時代。果たして、従来の「CRM」の考え方だけで十分なのでしょうか?今回は、CRMの歴史を振り返りながら、これからの時代に求められるCRMについて考えてみたいと思います。
90年代、「CRMブーム」がもたらしたもの

CRMが日本に紹介されたのは1990年代。当時のCRMは「顧客とのあらゆる接点を一元管理し、企業の売上を最大化する」という壮大なコンセプトのもと、大企業を中心に導入が進みました。
しかし、実際のところ、多くの企業がCRM導入に失敗しています。なぜか?
理由のひとつは、システムの規模の大きさと、それに伴う業務改革のハードルの高さです。大規模な統合型CRMは、単なるツール導入ではなく、業務のやり方そのものを変える必要がありました。その結果、多額の投資をしても思うような成果が出ず、頓挫してしまうケースが続出したのです。
2000年代、「使いやすさ」重視の流れへ
2000年代に入ると、CRMのあり方が大きく変わります。統合型の巨大システムではなく、営業支援(SFA)やメール配信など、特定の業務に特化したCRMツールが次々と登場しました。
この変化の背景には、「いきなり業務を改革するのは難しい」という企業側の現実がありました。大規模な統合CRMよりも、小さく始められて、徐々に業務を改善できるシステムの方が、多くの企業にとって導入しやすかったのです。
こうして、「業務を改革するためのCRM」から「業務を改善するためのCRM」へと、CRMの役割はシフトしていきました。
そして現在──Webが主役の時代へ
さて、現在のCRMはどうなっているでしょうか?
今や、Webは企業と顧客をつなぐ最も重要なチャネルのひとつです。O2O(Online to Offline)、IoT、オムニチャネルといった概念が登場し、Webは単なるマーケティングツールではなく、顧客体験そのものを左右する存在になっています。
たとえば、あなたのノートPCのバッテリーがリコール対象になったとしましょう。昔なら、販売店に持ち込んだり、カスタマーセンターに電話したりと、手続きに手間がかかりましたよね。でも今なら、Web上でリコール情報を確認し、機種の確認から交換手続きまでワンクリックで完了できます。
企業にとっても、Webを活用すれば顧客対応の効率が格段に上がります。こうした時代において、「CRM=顧客情報の管理」ではもはや不十分なのです。
オープンソースCRMという選択肢
では、企業はどうやって今の時代に合ったCRMを構築すればよいのでしょうか?
一つの有力な選択肢として、オープンソースCRMがあります。
オープンソースのCRMは、単にコストが抑えられるだけでなく、他の業務システムとの連携やカスタマイズの自由度が高いのが特長です。企業ごとに異なるニーズに合わせて柔軟に構築できるため、「自社にぴったりのCRMを作る」という視点で活用しやすいのです。
かつてのように莫大なコストをかける必要はありません。いま企業に求められているのは、「自社のビジネスモデルに合ったCRMを、賢く活用すること」なのです。
CRMの「本来の目的」に立ち返る
CRMは、「顧客との関係をどう構築するか」を考えるためのツールです。時代の変化に応じて、CRMの形も変わってきましたが、その本質は変わりません。
「システムを導入すること」自体が目的になってしまうと、90年代のCRMブームの失敗を繰り返すことになりかねません。大切なのは、「顧客とどのような関係を築くか」を起点に考え、そのために最適なCRMを選ぶこと。
オープンソースCRMのような柔軟な選択肢を活用しながら、これからの時代に合った「顧客との関係」を築いていきたいですね。