ビジネスを継続する上で、新規顧客の獲得と同等、あるいはそれ以上に重要なのがリピート顧客の獲得です。
新規顧客の獲得にはコストがかかりますが、リピート顧客は広告費をかけなくても継続的な受注が期待でき、口コミや紹介で新たな見込み客を呼び込む可能性もあります。
とはいえ、すべての顧客が自動的にリピート顧客になるわけではありません。
リピート顧客の獲得には、良好な関係構築や顧客満足度の向上を実現する仕組みやツールが必要です。
そのためカスタマーポータルは顧客とのコミュニケーションをより円滑にし、顧客満足度向上を支援するツールとして注目されています。
本記事ではカスタマーポータルがなぜ顧客満足度向上のために注目されているのか、特長やメリット・デメリットを含めてわかりやすく解説します。
カスタマーポータルとは?
カスタマーポータルは、企業やサービス提供者が顧客に提供するオンラインの窓口です。顧客は会員サイト上で自分のアカウント情報を管理したり、サポートを受けたりすることができます。企業と顧客のコミュニケーションを円滑にできるため、近年特に注目され、さまざまな企業が導入を進めています。
カスタマーポータルは主に「顧客満足度の向上」「コスト削減と効率化」「データ収集と分析」などのメリットがあるといわれています。
カスタマーポータルの3つのメリット
リピート顧客の重要性が高まっている現代において、カスタマーポータルが注目されている理由は以下の3つのメリットがあるからです。
- 顧客満足度の向上
- コスト削減と業務効率化
- データ収集と分析の効率化
顧客満足度の向上
インターネットやスマートフォンの普及により、現代の顧客は自己解決志向が高まっていると言われています。
インターネット、SNSの飛躍的な浸透と発展、加えてスマートフォン利用の拡大という背景により、24時間365日、好きなタイミングで情報にアクセスできることが老若男女問わず当たり前な環境になりました。そのため、顧客の好きなタイミングでアクセスできるカスタマーポータルは現代の自己解決志向の高まりに非常に即しており、BtoB・BtoC問わず多くの企業が注目し導入を進めています。
顧客が自己解決することで「自分の問題を自分で解決できる」という達成感や満足感と、問合せ時の待ち時間やたらいまわしを避けられることでエフォートレスな体験※を提供できます。
エフォートレスな体験…製品やサービスを利用する際に使う時間や労力が少なくて済むこと
コスト削減と業務効率化
顧客の自己解決志向が高まれば、自ずと企業側のサポートコストにもプラスなことが多くあります。
オペレーターが対応する電話問合せの場合、問合せの集中による待ち時間が新たなクレームやトラブルの引き金にもなりえるため、十分な対応を目指すと人件費や設備費がかなりかかってしまいます。顧客自身が解決できるライトな課題をカスタマーポータルで担えれば、顧客は電話の待ち時間を回避でき、オペレーターへの過度な問合せ集中を避けることができます。
また、BtoBでもカスタマーポータルを利用して請求書や発注書、納品書などのやり取りをオンライン化し、郵送費や紙代のコストカットや書類管理の効率化などのメリットがあります。
データ収集と分析の効率化
他社との製品・サービスの差別化、競争優位性の確保には顧客ニーズによりそったサービス内容や製品の提供がかかせません。そのため、マーケティングを目的としたデータ収集や分析は年々重要度が増しています。
データ収集や分析は、バラバラに管理されている顧客からの問合せ内容を地道に収集し、データ入力、集計、分析と進めるのはとても非効率です。
カスタマーポータルに顧客とのやり取りが集約されていれば、時間や工数のかかるデータ収集や入力作業のような非効率な作業をせずに分析作業に移行することができます。
どんなカスタマーポータルを導入するべきか
カスタマーポータルを構築・導入する方法は主に以下の2つが挙げられます。
- CMS
- CRM
CMS
CMSはWebサイトやブログのコンテンツを効率的に管理するためのツールです。
CMSで自社サイトを既に作成している場合、プラグインを導入することでカスタマーポータルの構築が可能です。
ツールによって差があるため、一概にはいえませんがWordPressを例にすると、多種多様なプラグインがあるため、簡易的なものであれば手軽にカスタマーポータルを構築できます。
注意点
プラグインには無料・有料のものがあり、さまざまな種類が用意されています。
そのため、自社にフィットしたプラグインを選定するにはそれなりの時間が必要です。
また、あくまでプラグインはサイトに付随する機能であり、簡易的なもので、顧客情報をリスト管理はできても、本格的な顧客関係管理の機能はないため、注意しましょう。
CRM
CRMは「Customer Relationship Management」の略であり、日本語では「顧客関係管理」と訳されます。
これは顧客と良好な関係を構築し、維持することを目的としたビジネス手法を指し、顧客との関係構築と維持の支援のために、顧客情報を効率的に管理・分析するツールがCRMツールです。
CMS同様、CRMも製品によって機能の傾向は異なりますが、CRM自体が顧客関係管理を目的としたツールなので、カスタマーポータルのメリットである「顧客満足度の向上」「データ収集と分析の効率化」との親和性が高いといえます。顧客満足度向上とマーケティング目的でカスタマーポータルを導入するのであれば、CRMのカスタマーポータルの導入がおすすめです。
注意点
CMS同様、CRMでもカスタマーポータルはあくまでオプション機能です。
製品によってカスタマーポータルは有料の追加オプションになっていることもあるので事前にチェックしておきましょう。
また、製品によって機能や特長もかなり差があるため、まずカスタマーポータルを導入する目的をはっきりさせておくことが重要です。
共通する選定ポイント
CMS、CRMのどちらでカスタマーポータルを構築するとしても、共通しているポイントは「目的がはっきりしているか」「必要な機能がそろっているか」「導入・運用にかかる期間と導入コストは適切か」という3つの点です。
数ある製品の中から、自社にフィットしたものを選定するには「目的」がはっきりしていないことには、「必要な機能」も定まらず、製品比較に時間がかかってしまいます。まずは目的を明確にし、自社にとって必要な機能を特定しましょう。そのうえで、導入・運用にかかる期間や導入コストが適切かどうか検討するのがおすすめです。
ほかにも、「提供元のサポートが十分か」という点も重要なポイントです。
代表的なCMSとして例に挙げたWordPressはオープンソース※のツールなので、比較的低コストで柔軟性が高いかわりに、プラグインの導入やカスタマイズにサポートサービスはありません。そのため、専門知識が必要になります。
オープンソース…ソースコードが公開されているソフトウェア
また、CRMは外資系の製品にカスタマーポータル機能が用意されている傾向があり、日本企業での運用を想定していない製品もあるため、事前にチェックが必要です。
カスタマーポータルの特性とメリットを活かせる導入を
カスタマーポータルは「顧客満足度の向上」「コスト削減と業務効率化」「データ収集と分析の効率化」が期待できるツールです。
この3つのメリットは顧客の自己解決を促すことで、リピート顧客の獲得に貢献すると考えられ、近年多くの企業やサービスで導入されています。
カスタマーポータルの特性をしっかり活かすには、導入の目的を明確にしておくことと、その目的を実現できる製品を選定することが重要です。
また、導入・運用には専門知識が必要です。社内に十分なリソースがない場合は、提供元にしっかりとしたサポートサービスがあるかも事前にチェックしておきましょう。