営業業務の効率化が目的でシステムを導入する際、CRMとSFA、どちらを選ぶべきかに迷っている方から、「CRMとSFAの違いは?」というご質問をよくいただきます。
一番の大きな違いは「システムとしての目的の違い」ではありますが、具体的にはどういうことでしょうか。
これからご説明していきます。
営業支援(SFA)とは?
SFAという言葉の成り立ち
SFAはSales Force Automation を略したものです。
営業支援システムと呼ばれることが多いですが、直訳すれば営業力自動化となります。
「何? それ?」と思いますよね。
SFAは言葉のニュアンスからも伝わるように、OA (Office Automation)の延長にあると受け取れます。
もともと企業向けのITシステムというのは、紙などで行われていた作業をコンピューターに置き換える、という考え方から発展していきました。しかし営業分野に関してはFace To Faceの世界ですから、システム化があまり進んでおらず、営業の仕事を管理するためのシステムとして1990年代にSFAができました。
しかしSales Automaitonだと、営業行為そのものをコンピューターが行ってくれるイメージですから、Sales Force Automationという不思議な言葉になり、日本では「営業支援システム」と呼ばれ始めたようです。
それでは、なぜSales Force Managmentではないのでしょうか。
日本の多くのSFAシステムベンダーは、「組織的(科学的)営業の実践を支援するシステム」がコンセプトとなっています。具体的には、「上司や同僚のあいだで顧客情報や案件情報を共有し、個人の能力に依存した(属人的な)営業から、組織での営業に変革する」といった感じです。
しかし、実際のSFAは「支援」ではなく「営業の仕事を管理」するためのツールだったのです。
筆者は昔、営業現場にデモをすると、「営業の行動を監視するツールだ!とんでもない!」とよく言われたものです……。
何故このような管理システムが導入されたのでしょうか。
SFAは米国では業績予想ツール、日本では営業日報だった
一概にSFAといっても、外国産と国産では、もともとの目的が大きく異なっていました。
元々米国での営業職はSalesRep.という契約社員が多く、実績と給与が連動する形をとっていた為、転職すると顧客情報が解らなくなるなどの弊害が多くありました。
また、経営は短期(4半期)での業績予想(の精度)を強く求められていた為、現状でどの程度の受注見込があるのかを正確に知ることはとても重要でした。出来るだけ正確な予測をする為には営業プロセスを細分化して管理する必要もあり、これを紙やExcelで行うのは大変なので、その為のシステムがSFAだった訳です。
一方、国産のSFAの場合は、昔から行われていた「営業日報」の電子化から始まったケースが多く見られます。
営業日報とは、訪問したお客様の名前・打合わせた内容・結果などを紙に記入するものですから、これは業績予想のために書くものではありません。上司・部下間のコミュケーションのためのツール、言い換えれば、営業行動管理のためのツールです。
営業日報が本当に役立っていたのかの議論はあると思いますが、紙だと振り返りが難しいですし、報告する上司以外との情報共有も難しかったため、システム化するメリットは大いにありました。
顧客管理(CRM)とは?
CRMはあくまで顧客管理が中心
CRMというのは Customer Relationship Management の頭文字をとった略語です。
日本語でいえば顧客関係管理です。
元々の成り立ちで言えば、CRMは「経営手法としての顧客志向」という考え方に基づいて、CRMシステムが生み出されました。システムとしてのCRMは、やはり顧客情報の管理が中心です。
顧客情報がデータの中心にきて、各顧客に紐づいた購買データ・アンケートデータ・イベントの参加状況・趣味趣向……等々、これらを活用することで効果的なマーケティング活動を行なっていこうというものです。
CRMと呼ばれるシステムには様々な種類があり、
- コールセンターのCTIシステム
- 会員管理システム
- メール配信システム
- 保守サポート管理システム
- DBの分析ツール
……等々、顧客接点にまつわる、ありとあらゆるシステムがCRMの範疇に入ります。そのため統合型のCRMシステムには、上に挙げた一通りの機能が含まれています。
「CRMとSFAの違いは?」-その質問の答えは
このように、元々CRMとSFAは、システムが作られた目的が大きく異なっていました。
SFAに関しては、米国の「業績管理系」に対して、日本の「行動管理系」という違いもありますが、大きく言ってしまえば SFA = 営業管理、CRM = 顧客管理といって差し支えありません。
つまり、質問の答えとしては……
- 管理したい対象が「外(顧客)」ならば CRM
- 管理したい対象が「内(営業)」ならば SFA
と言うことができます。
CRMで営業支援を行う最大のメリットとは?
前に述べたように、生い立ちは違えどCRMとSFAの「できること」はさほど違いません。米国のシステムを行動管理として使う事もできますし、日本のシステムを業績管理として使うことも、あるいは両方行うことも可能です。現在では生い立ちはあまり気にしなくても良いと思います。
統合型CRMにはSFA機能が含まれることが多く、一方のSFAにもCRM的機能が実装されており、「CRMかSFAか」という分類は、システム的にはあまり意味を為していないとも言えます。
では、CRM/SFAを導入すると具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
属人化の解消
CRM/SFAを使って各担当営業者が顧客情報を登録することで、自分だけしか知らない情報がなくなり、担当者以外でも対応が可能になる。
また、商談のノウハウや進捗を登録しておけば、後にマニュアルとして活用することもできる。
顧客情報を集約
営業プロセスを統一し、デジタルツールを用いることで、顧客情報を集約することができる。顧客情報を統一することで営業部全員が同じ顧客情報を登録・編集するため、二重登録がなくなる。
顧客情報の社内共有
デジタル化した顧客情報を社内全体で共有することで、販売部での請求業務の際に営業部に確認することなく最新の顧客情報を得ることができる。
また、マーケティング部の分析結果やニーズを把握し、営業戦略に活用することができる
CRM/SFAは、顧客を中心に営業支援(SFA)をはじめ社内の業務全体の情報を管理でき、管理する項目設定の自由度が高いため、自社プロセスの構築・運用には最適のツールになります。
但し、注意を要する点はあります。事例として何点かを挙げてみましょう。
CRM/SFA導入の注意点(デメリット)
顧客管理システムとして機能していない
SFAを導入して案件情報の共有は進み、コミュニケーションは活発化して良い影響がありましたが、顧客情報の入力は営業が好き勝手に行なっていた為に、データが使い物にならなかった事例です。
本来は同じ顧客であるにも関わらず、重複して登録されていたり、名前も誤って登録されているため名寄せもできずに、メール配信・各種案内の送付・年賀状送付などを結局バラバラのExcelで管理している、というケースを見かけます。システムとしては顧客管理を行なう機能があるのですが、意識せずに導入してしまった為の結果と言えます。
CRMの入力作業が大変すぎて誰も使わなくなった
顧客との取引実績・営業上でのやり取り・イベント参加情報・問合せ情報など、あらゆることを詳細に記録し、Webを含めた統合的なマーケティングの実践を目指していましたが……
営業やマーケティング担当者が手作業で入力・更新すべき項目があまりに多く、結局は誰も使っていないシステムになってしまったケースです。
とくに営業担当者は、目の前の数字を作る事に追われています。いくら顧客情報の集約が重要と言われても、自分達にメリットがなければ入力する意味を感じません。強制されてもモチベーションを落とすだけです。いくらWebの役割が増したとはいえ、多くの企業において未だ、営業は最大の顧客チャネルです。その営業にソッポを向かれてしまうと、結果は悲惨なことになります。
各種システムの連携ができていないため顧客対応がかえって悪化した
Web上での会員管理・メール配信・イベント管理・営業支援・コールセンター……
必要になった業務システムをバラバラに導入していった結果、顧客情報が社内に散在してしまい、各情報の連携ができていないため顧客対応がかえって悪化、システム管理やデータメンテナンスの効率も悪くなってしまった……というケースです。
先述の通り、CRMシステムには様々な種類があり、目的に応じて導入できるものが増えてきました。しかし気軽にシステムを増やしてしまうと、部門間で情報が共有されていない、という状態になってしまいます。
顧客側から見た企業は一つですから、かえって顧客の心象を悪化させることになりかねません。
実際に「大クレームがあったにも関わらず、営業がそれを知らずに顧客先を訪問し、火に油を注いでしまった」なんて話はよく聞きます。
まとめ
いかがでしょうか? これらは誇張ではなく、実際に多くの企業で見られる現象です。
システムとしての「SFAか、CRMか?」の違いに振り回されるよりも、「企業体としての顧客との関係性の在り方」という大所高所からの視点で、システムをどう最適化していくべきかを考えることが重要です。
場当たり的なシステム導入ではなく、しっかりとしたロードマップを描いた上での検討が必要となります。その点においても、道具として柔軟性の高い、F-RevoCRMのようなオープンソースを利用し、自社にあった適切なシステムを構築するというのは良い選択だと思います。